

学童の安心・安全サービスを充実させながら地域の防災・防犯を点から面へとの展開を図るシステム
日出町は、大分県の中北部、国東半島の付け根に位置しており、別府市や杵築市に隣接し、別府湾を臨む人口28,414人(平成19年11月30日現在)、面積73.23km2の町です。町の北西部には鹿鳴越山系が広がり、南東部には別府湾に接する約25kmにわたる美しい海岸線が続いています。大きな河川はありませんが、湧水など良質な水に恵まれています。
大分県日出町位置図
基幹産業は農業で、紅はっさく、白いぼきゅうり、ハウスみかん等が町の特産品となっています。また、昭和59年に指定を受けた県北国東地域テクノポリスの地域内にあり、高度技術産業の集積が進んでいます。日出町は、大分市から約25km、大分空港から約27kmの位置にあって、町内には、大分自動車道、宇佐別府道路、大分空港道路の3本の高速道路、及び国道10号線、国道213号線が走っており、また、JR日豊本線の駅が4つあるなど、交通の要衝となっています。
温暖な気候と比較的災害が少ないなど、豊かな自然と立地条件に恵まれた日出町は、大分市や別府市のベッドタウンとして発展しており、大分県内では数少ない人口増の町となっています。
日出町役場
(1)家庭と学校が連携して防犯体制を構築
日出町では、各地域の自治会で自主防犯組織を結成し、犯罪防止・抑止活動を行っていますが、昨今の社会情勢の変化により地域社会の犯罪抑止力が低下してきています。全国的にも幼児や児童、生徒に対する事件事故が増加傾向にあり、日出町も安心していられない状況となってきています。
通園・通学時の安全安心が叫ばれているなかで、地域社会の活動だけでなく、家庭と学校が連携した危機管理体制(ネットワーク)を確立することが必要となっています。日出町では、これまで保護者や学校が主体的に活動をするシステムが整っていなかったため、これを構築するための新たな方策を検討してきました。
このようななか、日出町では平成18年度にセンターのICカード標準システム実証実験事業に参加して、地域通貨「日出町にこにこ通貨カレイ」の導入に取り組んでいたので、すでに住基カードを利用する環境が整っていました。そこで、この住基カードを利用して「通園通学時の安全安心メール配信システム」(以下「安全安心メール配信システム」という。)の導入を検討することになりました。
(2)学校と連携しての事業検討
庁内では、平成19年3月に副町長を中心として、教育長、関係課長(財政課、住民課、企画振興課、教育委員会管理課)の計6名による推進組織を立ち上げて、事業実施の有無から事業計画の策定、システムの内容などを検討してきました。そして、同年5月に平成19年度のセンターによる実証実験の実施団体に選定されたのを受け、システムを構築し導入することになりました。
導入にあたっては、学校との連携が必要不可欠であるため、学校校長会及び各学校の情報教育担当教諭の集まりであるコンピュータ活用推進委員会とも協議をしてきました。また、町のネットワークと小中学校のネットワークが別々であることから、学校関係ネットワークの管理者である県教育センターにも相談しながら進めてきました。
(3)先進事例を参考にシステム構築
安全安心メール配信システムは、子ども達が登校時に住基カードを学校に設置してあるリーダライタにかざせば、予め登録しておいた保護者の携帯電話等に無事到着したことを告げるメールが到着するというものです。下校時にも同様にメールが配信されるので、帰宅時間の予想やメールを受けてから迎えにいくなどの使い方が可能です。
システムの構築にあたっては、既に同様のシステムを構築していた宮崎県の南郷町や新富町等の取り組みを参考にすることができました。例えば、サーバを各学校に置いた事例では、先生方が登録作業等をしなければならず負担が大きいとの声を聞いたので、学校側の負担軽減と個人情報の保護、また、サーバを集中することによる保守費等のコスト削減の観点からデータベースサーバ、メールサーバは役場で一元管理することにしました。したがって、このシステムへの登録申請も役場へ来てもらって行うことにしました。
また、子ども達が毎日使うことを考慮して、ICカードリーダライタはカードを挿入するものではなく、上面に置くタイプにするとともに、パソコン経由ではなくリーダライタから直接ネットワークに接続することができ、住基カードの読み込み時間の短いものを選択しました。今回使用しているリーダライタの反応時間は約0.8秒で、子ども達もストレスなく使うことができるものとなっています。ただ、このリーダライタは、住基カードのデータを内蔵するメモリに蓄積するだけなので、そのデータをサーバから2分おきに読みにいきメールを配信することにしているため、メールの配信にあたっては、最大3分の遅れが発生する可能性があります。しかし、メールの遅延可能性よりもカードをかざしたときのレスポンスを重視してシステムを構築しています。
安全安心メール配信システムは、町内の幼稚園児、小中学校の児童、生徒が対象となっているので、幼稚園児や低学年の小学生にもわかり易いように、カードが正しく読み込めた場合には、画面に「○」が表示される仕組みになっています。読み込みに失敗した場合は「×」が表示されるとともに、音でも知らせるようにしています。
また、住基カードを毎日鞄から出してリーダライタにかざすのは不便であるため、ランドセルなどに取り付けることのできるリード付きのカードホルダを用意して、対象となる子ども達に交付しています。このカードホルダもリーダライタにかざした時の誤反応やレスポンスを考慮して選定しています。
リーダライタは、町内の幼稚園6園、小学校6校、中学校3校に計36台設置することとし、児童生徒数割で1校(園)あたり1台から6台を学校の昇降口などに設置しています。

リーダライタ:カードが正しく読み込めました。 |

携帯電話に届いた学校への到着を知らせるメール |
(4)保護者の8割がこのシステムに興味を示す
安全安心メール配信システムの導入にあたっては、7月に保護者への説明会を開催しました。説明会へ出席した保護者の評価も高く、当日行ったアンケートによると、約8割の保護者がこのシステムに興味を示していました。幼稚園や小学校低学年の子どもの保護者など比較的若い世代にあっては、携帯電話などの通信機器に対するハードルも低く、説明会に出席した保護者の携帯電話保有率は95%以上であるため、保護者のニーズにマッチし評価を得たものといえるでしょう。
また、9月には、平日の夜に計6ヶ所の小学校へ出向き、保護者説明会を開催するとともに、その場で住基カード及び安全安心メール配信システムの利用申請を受け付けました。平日の昼間に役場を訪れることが困難な保護者も多いことから、この説明会では約300人の児童についての申込みがありました。
(5)安全安心メール配信システムが徐々に定着
10月下旬に安全安心メール配信システムが稼動しました。稼動から1週間は、役場職員が小学校へ出向き、住基カードのかざし方の指導を行いました。このような取り組み等により、住基カード交付者は平成19年2月時点で約260人であったものが、11月には約990人と増加しています。また、安全安心メール配信システムは、町内の全ての幼稚園児及び小中学生約2,700人を対象としていますが、その内約500人の園児、児童等が登録しています。現在も1日あたり4〜5人の申請があり、このシステムも徐々に定着しつつあります。利用している保護者からの口コミや、町の広報などによる周知及び住民説明会やサーバ室の工事の様子などがテレビで取り上げられたことなどにより、住民の間にも浸透してきています。また、住基カードを通園通学時に鞄の外に着けているので、このシステムが周知されるとともに、住民の防犯意識の高揚にもつながってきています。
さらに町では、安全安心メール配信システムに加入する園児、児童等が住基カードを取得する場合には、交付手数料を無料として、このシステムの普及を推進しています。
安全安心メール配信システムの導入にあわせて、日出町では住基カードの一括発行機能も導入しました。これまではセンターに委託して発行していたため、申請から交付までに10日から2週間程度かかっていたものが即時発行できるようになったことにより、住民サービスの向上とカード発行事務の効率化が図られました。
学校で住基カードをリーダライタにかざす児童
(6)メール同報システムによる利用拡大
日出町が今年度導入したシステムでは、学校の端末からサーバにデータを送ることにより学校単位、学年単位、あるいはクラス単位などでメールを送信することができます(メール同報システム)。このシステムを利用して、不審者情報のお知らせや学校からの各種連絡事項の伝達、あるいはメールマガジンの発行などを行うことが考えられます。これまでの学校現場におけるICTを利用しての情報発信は、先生個人の負担によるところが大きく、学校によって格差がありました。しかし、このメール同報システムでは、先生はメール同報に際してのグルーピングのみを行えばよく、システムやアドレス管理も必要ないことから、同じシステムを町内全ての教員が共有できることになり、学校と家庭をつなぐ新たなコミュニケーションツールとして期待されています。
ただ、安全安心メール配信システムが稼動したばかりの状況においては、情報を受け取る保護者としても、一度にいろいろなサービスが始まると混乱するおそれがあるため、まずは安心安全メール配信サービスを確立させて、その後メール同報システムによるサービスへと順次広げていきます。
特に中学校などは、安全安心メール配信システムの利用率があまり上がらないことが予想されますが、今後、メール同報システムの取り組みが始まれば、より効果的な情報発信が可能になるので、利用が拡大するものと期待しています。
(7)徐々にサービスを拡大した浸透を図る
安全安心メール配信システムの利用拡大を図るため、平成19年度末には、平成20年度就園、就学予定者を対象とした学校説明会でシステム内容を説明する予定になっています。今年度内には利用者からアンケートをとって、改良点や提供して欲しい情報などを吸い上げ、より利用者ニーズに適合したものに修正していきます。
今後、安全安心メール配信システムの定着状況をみながら、メール同報システムも稼動する予定です。クラスや学校単位での同報メールなどに利用するとともに、地区の子ども会や中学校の部活動に働きかけるなどして、少しずつ口コミで広がるような推進をするとともに、参加率の高いクラスでモデル的に実施することなども検討しています。
さらに、リーダライタを公民館などに設置し、災害時の避難者情報確認のために利用することについても検討していきます。
安全安心メール配信システムはスタートしたばかりですが、口コミなどにより利用者も徐々に増えています。そして、まずは安全安心メール配信システムの定着を図ったうえでメール同報システムを稼動するなど、計画的にステップアップしていく日出町の姿勢は、より効率的に住民サービスの向上を図ることができる取り組みとして期待されます。
(8)資料
-
構築・運用費用
| 項目 |
内訳 |
金額 |
備考 |
| 構築費用 |
システム構築費 |
31,000,000円 |
平成19年度 |
| 住基カード購入費 |
2,730,000円 |
平成19年度 |
| 運用費用 |
システム保守費等 |
1,650,000円 |
平成20年度 |
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構築・導入に要した期間
平成19年5月〜10月
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整備した条例等
特になし(平成18年度に地域通貨導入にあわせて、日出町住民基本台帳カード利用に関する条例を整備済み)