
住民参加型ポータルサイト「ポータル紫波」。行政機関は町の機能の1つに過ぎないという認識に立って、「主役は住民」を前面に押し出した特色のある取組みが注目されている。住民同士の交流の場として、また住民と役場の交流の場として作られた。子供向け、高齢者向け、携帯電話用と様々な角度からの利活用が図られるよう工夫されている。そのバックグラウンドには地域の各種団体と大学の協力があった。
紫波町役場は事務棟が3方に伸びる。「人」を第一にするというコンセプトを示しているようだ。

紫波町(しわちょう)
| ■位 置: | 岩手県盛岡市の南に接し、東西27.8km、南北12.9kmで、東方に北上山地、西方に奥羽山脈、中央に北上川が流れる。南北を東北自動車道、東北新幹線、東北本線が貫き、北から古館、紫波中央、日詰の3駅を擁する。 |
|---|---|
| ■面 積: | 239.03km2 |
| ■人 口: | 3万4,526人、世帯数1万586世帯(2007年1月末現在) |
| ■沿 革: | 1955年(昭和30年)、紫波郡日詰町、古館村、水分村、志和村、赤石村、彦部村、佐比内村、赤沢村、長岡村が合併し町制を施行、紫波町となる。 |
紫波町のホームページにアクセスすると、最初に現われるのは「ポータル紫波」だ。町が運営する以上、《町からのお知らせ》は当然として、普通は電子申請・届出、首長へのメール、などに続く。ところが、そのすぐ下に《町民の声・町の話題》が並び、こども、主婦、高齢者をクリックすると、ひらがな表示になったり、文字サイズが大きくなったりする。
《行事カレンダー》の下にあるのは《投稿アルバム》、《タウンナビ》、画面の左には《野村胡堂あらえびす記念館》、《食ナビ/農業ネット》、《観光交流案内》、《町の情報誌紫波ネット》、《ITサポートセンター》、《図書ネット》、《防災マップ》、《実況気象》などのバナーが並ぶ。《電子役場》はその中の1つでしかない。
何より他の市町村のサイトと違うのは、誰でも投稿できるようになっている点だ。《町民の声・町の話題》、《投稿アルバム》だけでなく、タイトルバーの《電子会議室》、いちばん下の《サークル》も投稿ができる。サイトを利用するには、会員登録を行えばいい。紫波町に住んでいなくても制約はないという。
インターネットのボーダーレス特性を活かして、域外の人にも参加してもらおうという地域サイトが増えている。関心を持ってもらえば地域の物産を買ってくれるかもしれないし、観光に来てくれるかもしれない。
まして都市で暮らす地元出身者が、懐かしさもあって何かのときに協力してくれるかもしれない。そのためには、利用を広く開放して、町のサイトを双方向性のある情報共有の場、交流の場にしていこう、という動きだ。
行政機関による情報発信から、パブリックセクターパワーによる知識共有へ――は、Web2.0型の新しい公共財の考え方、という指摘もある。紫波町のポータルサイトが構築されたのは2002年であり、いわばWeb2.0のコンセプトを先取りしたわけだった。
そのコンセプトはどのようなプロセスから生まれたのだろうか。これまでに紫波町が取り組んできた地域情報化施策を表にすると、次のようになる。

JR東北本線の紫波中央駅は、ちょっと変わっている。無人駅は全国にいくらもあるが、プラットホームや構内施設など駅自体の建物に必要な費用は全額町民の寄付で賄った。さらに、JRが管理するのはホームまでで、駅待合い施設は、全て町産材を使って町の大工さんの手により建てられた。また、隣接する環境・循環PRセンターには、NPO法人紫波みらい研究所と地産地消プラザ「紫あ波せ本舗」が入居しているが、この建物も廃材を利用して地元大工さんのボランティアにより建設されている。
取材に対応してくれた紫波町経営支援部企画課情報政策室長の佐藤美津彦氏に聞くと、「駅は住民の念願だったのです」という答えが返ってきた。
東北本線が全通するとき、ここに駅ができるはずだった。ところが機関車の火の粉が火事を起こすという風評で、鉄道と駅が市街の遠くに敷設された。そのために南の日詰駅、北の古館駅の間にエアポケットができてしまった。
「かれこれ20年ほど前、住民による新駅設置促進期成同盟が結成されまして、その熱意に役場が動かされたかたちで町をあげてJR東日本に働きかけたのです」(佐藤室長)。
新駅誘致の全町運動が実ったのは10年後だった。町史には「1998年3月、紫波中央駅開業」と記録される。そういうわけで、盛岡市や北上市に通勤する若年世帯の住宅が、ようやく駅周辺に建ち始めた。
この話から書き起こしたのは、紫波町の土地柄を端的に示す逸話に思えるからだ。新駅誘致が住民主導で始まり、併設の地元農産物販売センターも地域の主婦チームが運営している。
ちなみにポータル紫波に登録されているNPOは8団体、サークルは6団体(伝統芸能団体を含む)、民間のホームページは5つ。人口3万5,000人規模の町としては、驚くほど市民活動が盛んだ。しかも、そういった活動をバックアップする市民団体もある。
役場庁舎別館(旧日詰郡庁舎)2階にある「ゆいっとサロン」がそれだ。学社融合支援グループ「えんのした」が、町の委託を受けて運営している。
「1人で悩みを抱えている方、何かしたいけれど方法が分からない方。井戸端会議で話しているうちに、アイデアが生まれ、新しい活動になっていく。必要なら町役場に掛け合うのも、わたしたちの役目」と話すのは、同グループの代表を務める中田芳子氏だ。
こうした活動がポータル紫波の背景にあったことは、まず間違いない。