
市川市は、千葉県の北西部に位置し、西の江戸川を隔てて東京都に隣接し、北は松戸市、東は船橋市・鎌ケ谷市、南は浦安市に接しています。
東京都心から20km圏内にあり、鉄道は7路線16駅、東西には高速道路があるなど交通の利便性が良いため、市内居住者の約3割が都心への通勤・通学者であるなど、東京のベッドタウンとしての面を持っております。
また、当市は、永井荷風、東山魁夷など多くの文人墨客が居住していたこともあり、市内には名所・旧跡も多く、滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」の舞台となった里見公園や、勝海舟などによって国会議事堂の選定地として選ばれた国府台(こうのだい)には、現在、高校や大学などの教育機関が立ち並ぶなど、文教・学術都市としても発展して参りました。
当市では、平成10年頃から本格的に電子自治体としての取組を始めましたが、その目標として、「市民サービスの向上」、「労働生産性の向上」、「信頼・安心の向上」、「民主主義の発展」、「地域産業・住民の活性化」という5つの目標を掲げております。
これらの目標を達成するためには、情報セキュリティが重要であるとの認識から、極めてセキュリティの高い住民基本台帳カードを活用することが必要不可欠であると考え、住基カードおよびその利用インフラとして重要な証明書自動交付機に対する取組を進めました。
福祉関係利用券
京成線の市川真間駅に設置された自動交付機
現在、当市では、市役所本庁・出張所・公民館等を始めとする公共施設の他、主要4駅や商業施設など市内25か所に30台の自動交付機を設置しており、各駅では朝6時30分から夜11時まで、商業施設では各営業時間に合わせて利用時間を設定し、休日や祝祭日にも利用できる環境を整備しております。
自動交付機は、住基カードの多目的利用サービスのひとつですが、自動交付機を利用した場合、窓口より50円安く証明書を取れることもメリットのひとつです。
自動交付機の設置場所に関しては、「駅やコンビニなど便利な場所で証明書交付などの行政サービスを利用できるようにしてほしい」と希望されている市民が、アンケート調査でも93%にも及んでいました。
こうした市民ニーズに対応するため、平成18年度に自動交付機をこれまでの6台から23台に大幅に増設するとともに、住民票、印鑑登録証明書等の証明書に加え、税関係の証明や福祉関係の利用券が受け取れるようサービスメニューを拡充しました。
ここでユニークなのは、「福祉タクシー利用券」と「はり・きゅう・マッサージ施術費助成券」と呼ばれる福祉関係の利用券です。
いずれも従来は窓口に行かなければ受け取れなかったものですが、特に障害者の方や高齢者の方などハンディをお持ちの方が、近くの施設の自動交付機を利用し、福祉関係の利用券を受け取れるようになったことで、大変喜ばれています。
イベント会場での住基カード申込受付の模様
市川市では、平成18年10月から平成20年3月まで「住基カード普及促進キャンペーン」を実施しました。キャンペーンの内容としては、
○住基カードの交付手数料(500円)の無料化
○成人式、市民まつり等のイベントや各講演・講習会等での受付出張臨時窓口の開設
○市民全世帯への普及広報資料の郵送や広報紙・CATVでの放映
こうした普及活動の成果もあり、平成20年11月末現在で、住基カードは約6万1,000枚が交付され、人口比約13%を超えました。
しかし、カード保有者を年齢別に見ると、60歳代の方が全体の22.4%を占めるなど最も多いものの、20歳代では9%と若い世代ほど住基カードを持たない傾向にあります。若い方にもぜひ住基カードを利用して貰えるようサービス内容や普及活動の充実が必要です。
最近では、各自治体において電子申請システムの共同構築を行う例が増えていますが、申請が電子的にできても証明書の受け取りや手数料の支払いで、結局、市役所などの窓口に行く必要があることが、電子申請が伸びない理由のひとつと言われていました。当市が平成20年4月から運用を開始した「電子申請・交付サービス」は、こうした課題を解決するひとつの方法と言えます。
自宅のパソコンがそのまま「市役所の窓口」となり、インターネットで必要な証明書などの申請をすると、交付可能となった時点で申請者の携帯電話やパソコンにメールで通知が来て、市内各所に設置した自動交付機で書類を受け取ることができる仕組みです。
申請は、1年365日・24時間可能で、受け取り時間も例えば駅に設置された自動交付機では、午前6時30分から午後11時まで可能ですので、あらかじめ電子申請を行い、通勤・通学の途中や仕事帰りに交付物を受け取るといったことも可能になります。
現在、戸籍の附票の写し、国民健康保険税納税証明書、軽自動車税証明などの証明書(12種類)の交付が可能となっています。
住基カードと自動交付機を使った電子申請・交付サービスは、将来の本格的な電子申請・電子交付に結び付く大きな可能性を秘めたシステムと言えます。
JR市川駅前に開設した「市川駅行政サービスセンター」
平成20年12月にJR市川駅前に開設した「市川駅行政サービスセンター」では、自動交付機を4台設置し、従来の窓口での証明書等発行手続きの効率化を一層進めておりますが、この行政サービスセンターでは、住基カードをお持ちでない市民でも自動交付機を利用し、証明書等の交付ができる「交付カード」の貸し出しを行っております。この交付カードは、同一世帯の家族の方が1回限り利用できるワンタイムカードですが、簡単な手続きで利用できるため、まず市民の方に自動交付機の利便性を実感していただければ、今後の住基カードの取得増にもつながるものと期待しています。
このように、利便性の高い住基カードと自動交付機ですが、いくつか課題もあります。
自動交付機の調達や運用のコストにつきましては、以前より低価格化が進んでいるとはいえ、依然として高額なものとなっております(1台当たりの運用経費:約600万円)。
製造コストの低価格化等に期待するとともに、利用頻度の向上も重要となります。自動交付機の利用が進めば進むほど、1通当たりの証明書のコストも安くなりますので、サービスメニューの拡充を含む一層の利用促進策も必要と考えます。
次に、住基カードの交付手続きに係る課題です。アンケート調査でも、住基カードをお持ちでない市民の36%は、住基カードの交付申請手続き等が面倒であるとの意見もあり、申請手続きの機会の増加や手続き自体の工夫などの対応が必要と考えます。
現在、申請手続きは郵送でも受け付けていますが、受け取りには申請者自身が公的な身分証明書を持参のうえ来庁していただかなければなりません。これに対しては、例えば、「本人限定受取郵便」の仕組みが利用できないか等の検討が必要と考えています。
現在、市内に設置されている自動交付機は、全体の18%が午後5時以降の夜間に利用され、また、40%は、駅や商業施設などの従来の市役所の窓口ではない場所(20か所)の自動交付機を利用しています。こうした市民の方の利用特性等も踏まえて、今後の取組を進める必要があるものと考えています。
これからの行政サービスの大きな変革期に向け、国や地方自治体の役割も大きく見直されようとする中で、電子私書箱(仮称)や社会保障カード(仮称)、次世代電子行政サービスの実現など、各自治体に少なからぬ影響を与える課題も多々提示されております。
今後、市民ニーズに対応したワンストップサービスの実現や、市民一人ひとりに対応したきめ細かな情報提供などが求められますが、そのためには、住基カードは市民と行政を結ぶ大切な「鍵」として、そして自動交付機はその実現に欠かせないサービス提供の「基盤」として、これから進展する次世代電子行政サービスの重要な役割を担うものと考えます。
市川市では、今後も住基カードや自動交付機によるサービス内容の拡充と普及広報の強化により、市民サービスのいっそうの向上に努めるとともに、このような成果が全国の自治体にも普及拡大することを期待し、取り組んで行きたいと考えています。
※本稿は、市川市情報政策部参事・町田昇氏による寄稿(『自治日報』平成21年1月16日号)をベースとしています。
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